毛抜き合わせについて(印刷用語)
オフセット印刷では、4色(CMYK)の版を使って、1色ずつ順番にインクを刷り重ねていきます。
そのため、それぞれの版が少しでもずれてしまうと、本来存在しないはずの部分に紙の白が見えてしまうことになります。
これを「版ズレ(見当ズレ)」といいます。
この版ズレを避けるための処理として、オーバープリントというものがあります。
(オーバープリントについては以前の記事にありますのでご参照ください。)
しかし、これはスミ(K100%)の色を他の色の上にのせる時の話でした。
では、色同士を重ねるとき、版ズレが起こってしまったら…?
単にオーバープリントの設定にしてしまったら色が変わってしまいます。
データ作成時の対処方法としては2つあります。
1つは、「下におく色と上にのせる色で、共通の色を使う。」
これであれば版がずれてしまっても紙の白が見えることはありませんよね。
しかしこの方法ではデザインが限られてしまいます。
そんな時に使われるのが2つめの「毛抜き合わせ」です。
色と色との境目を重ね、少し食い込ませることによって、版ズレをした時にも紙の白が出てくることを防ぐのです。
画像ではわかりやすく大きく表現していますが、実際の作業では重ね合わせるのは0.1mm程度(ものによっても異なります)。
その名の通り、髪の毛ほどの太さの処理なのです。
またこの時、通常は淡い色を濃い色に重ねます。
淡い色が濃い色に混ざった時の方が逆の時よりもなじんで、境目が目立ちにくくなるためです。
イラストレーターでの毛抜き合わせの作業
いくつか方法はありますが、簡単な方法をご紹介します。
1.オブジェクトの「線」に太らせたいオブジェクトの色を設定。
2.線の幅を0.1mmにする。(※ものによって異なります)
3.線のみを「オーバープリント」もしくは「乗算」にする。
上の画像のように、重なった部分が濃くなりますが、実際には0.1mmの太さなので、
白が出るよりは自然な仕上がりとなります。
しかし、アナログであった昔とは違い、
現在ではCTPという機械によって製版されていることや、印刷機自体の性能のよさもあり、版ズレなどは非常におこりにくくなっています。
そのため、「紙の白が出てしまった」なんて話もめったに聞かないので、通常の印刷であればそれほど心配することもないかと思います。
また、どの色を太らせて重ねるか、どの程度重ねるかはものによって違いますので、大きな印刷物などで「確実に紙の白が見えないようにしたい!」とお困りのときは、ぜひ相談してみてくださいね。
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