印刷でよくあるトラブルの一つに挙げられるものに、オーバープリントの問題があります。

通常、カラーの印刷物では、4色のインク(CMYK)を使って色を表現します。
イラストレーターなどのソフトでもこの4色の数値で色を調整していきます。
しかし、実際の印刷では、インクの色ごとに刷版が作られ、1色ずつ刷っているのです。

つまり4つの版を使って順番にインクを刷り重ねることで印刷が行われる、ということです。

インクを刷り重ねていく、ということなので、
それぞれの版の位置が少しでもずれてしまうことがあると、異なる色が隣り合っている部分で隙間ができ、本来見えるはずのない部分に紙の白が見えてしまうことになります。
これを版ズレと言い、場合によってはデザイン的な品質低下にもつながってしまいます。
それを避けるために「オーバープリント」の処理が存在します。

オーバープリントとは「色と色とをそのまま重ね合わせる」という設定で、
オブジェクトが重なっている場合に、上のオブジェクトだけでなく下のオブジェクトの色も印刷するというものです。

つまり、「下の色+上の色」になっているということです。

通常、スミ(K100%)の色はこのオーバープリントの設定がなされています。
スミ100%の色は濃いため、下に他の色があってもそれほど影響を受けないからです。

しかし、スミ文字(K100%)であっても、注意しなければならない場合もあります。

下の画像の、絵柄の上に載る太いスミ文字を見て下さい。

スミ文字(K100%)は通常オーバープリントの設定になる、と上で述べましたが、良く見ると文字の下側に下の図柄の境界線が表れています。(※通常モニタ上ではわかりません。)

スミのインクであっても、「下の色+上の色」になっていることは変わりがなく、完全に下の色を覆い隠すことが出来るわけではないからです。

面積が狭く、また図柄の境界線でない部分では殆ど気にならないのですが、上の例のように大きな面積のものの場合はどうしても色の境目がはっきりと表れてしまうのです。

こういった場合は、文字の色を「K100+シアン30~50%」などに設定することによりオーバープリントの処理を外すことが可能となります。

また、スミ以外の色にオーバープリントの設定をした場合は、大きなトラブルにつながる可能性があるので注意が必要です。

オーバープリントとは、前述した通り「下の色+上の色」になるということなので、

背景を青にし、上に黄色のオブジェクトを重ねると、仕上がった際にオブジェクトの色は緑になってしまうのです。

スミ以外の色同士を重ねる際には、特別な理由がない限りオーバープリントの処理を行わないようにすることが重要です。
(スミ以外の色を重ねる際にはオーバープリントではなく「抜き合わせ」等と呼ばれるいう処理を行うことによって上記のような版ズレなどのトラブルを避けることが出来ます。)

データと印刷したものとで色が変わってしまうというトラブルを避けるためにも、
オーバープリントの危険性を認識し、むやみにオーバープリントは使用しないという意識を持ってデータを作成することが大切です。

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